Beer Bear Trip

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在宅ワーク『テープ起こし』をやってみた

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在宅ワークの代表格といえばテープ起こしである。

 

パソコン一台あれば、あいた時間にちょいちょいっと入力し、

 

お小遣い程度の収入が得られるお手軽ワーク。

 

・・・と最初は私も思ってました。

 

実際にやってみると、かなり大変なお仕事でしたよ、これは。

 

 

 

 

『テープ起こし』を簡単に説明すると、

 

いわゆる音声データを文字に書き起こすというお仕事です。

 

ざっくり説明するとかなり簡単そうに思えますが、

 

この『聞いて書き起こす』という作業がかなり大変なんです。

 

もうね、最後のほうは仕事を受けるのが嫌になるくらい。

 

『お金が欲しいからやってみよう♪』から

 

『お金もらってもやりたくない・・・』にかわるくらい苦痛でした。

 

そんな私の体験談も含めて、

 

リアルなテープ起こしの実情というのを話せる範囲でご紹介しましょう。

 

 

 

まず一番気になる単価。

 

私は、1分90円という値段で受けてました。

 

この値段が高いのか安いのかは、テープの質と自分の技量次第となります。

 

私のタイピングの腕は、おそらく中の中。

 

まあ、タッチタイピング(旧ブラインドタッチ)は普通にできるかなというとこ。

 

こんな私がテープ起こしをしますと、

 

だいたい1時間の作業で10分くらいのデータを書き起こせます。

 

つまり60分のテープの場合、書き起こすだけで6時間くらいかかるわけですね。

 

そして、書き起こした文章を見ながら聞き直しをしていくわけですが、

 

これが2時間くらいかかるわけです。

 

つまり作業時間は、8時間。

 

60分×90円=5400円

 

5400円/8時間=時給675円

 

『まあ、在宅ワークだし、作業は好きな時に出来るしこんなものかな♪』

 

と思ったあなたは、甘い!!甘いすぎる!!

 

これは、テープの音質がよくトラブルなく進んだ場合の計算です。

 

ここにいろいろな問題が絡むことによって、

 

心と時給が蝕まれていくことになるわけです。

 

 

 

トラブルその1

『音質が悪くて聞き取れない』

 

テープ起こしで貰う音源というのは、

 

ぶっちゃけ聞くまでどんな質のものかわかりません。

 

大体の場合、クライアントがデジタル端末で録音した素材をいただくのですが、

 

この音質の良い悪いの振り幅が大きすぎるのです。

 

講演会のような場所で回りが静かで話者がマイクを使っているような場合、

 

もうノンストレスでスラスラと書き起こせます。

 

講演会をするような人は、人に向けて話すことに慣れてますので

 

基本的に活舌もよく、気持ちよくお仕事をすることができます。

 

対照的に、雑音の多い会議室で大人数の会話を拾っている場合、

 

もうストレスで寿命がマッハでなくなるくらい、イライラでします。

 

話者は録音してることなんて大体、意識してませんので、

 

声は小さいわ、活舌悪いは、モゴモゴ話すわで。

 

素人録音なのでノイズが多すぎて聞き取れないなんてことはザラですしね。

 

 

 

トラブルその2

『方言で何言ってるかわからない』

 

人間って、よく聞く言葉は脳で補正して理解してるんですよね。

 

前後の文脈とか言葉のリズムで。

 

だから多少曖昧でも、同じ言語なら人々はスムーズに会話ができるわけです。

 

つまり何が言いたいかというと、

 

『聞きなれない方言は、本当に何言ってるか不明』なんです。

 

もう聞き取れた範囲の言葉をネットで検索して、

 

前後の意味を推論して、ひとつひとつ検証していくしかないんです。

 

この作業が入ると、作業時間はどんどんと膨れ上がり、

 

1時間作業しても5分ほどしか書き起こせなかったという悲しいことになります。

 

 

 

トラブルその3

『誰が誰なのかわからない』

 

話者がひとりふたりならいいんです。

 

たくさん居る場合、そしてすべて同性の場合。

 

もう誰がいつ発言したのかわからなくなってきます。

 

テープ起こしは、誰が発言したかを整理するために

 

話者の特定をすることが多いのですが

 

例)鈴木:このような場合、・・・

  田中:つまりは、・・・

 

世の中、そんな特徴的な声の人ばかりじゃありません。

 

さらに録音されたデータの中でモゴモゴ話してるおっさんの声で

 

誰が誰なのかなんて容易くわかるはずもない。

 

話者の声の聞き分けに関しては、声が通る分、女性のが楽でしたね。 

 

 

 

トラブルその5

『納期の恐怖』

 

テープ起こしをしていくと、だんだんと自分の実力が把握できていくので、

 

『うん、この音質とこの内容なら○○時間で終わるな』と

 

仕事のペースを予想することができるようになるのですが。

 

イレギュラーが発生した場合、(音質の劣化、途中参加の話者がグズ)

 

もうとにかく納期に間に合わせるために、

 

必死で時間をつくらなければならなくなります。

 

一度受けた仕事は、責任もって最後までやらないといけませんし。

 

ケチがつけば、次の仕事につながらなくなりますからね。

 

つまり、何がなんでも納期に間に合わせなけれがならない。

 

開いた時間でお手軽ワークが、

 

本業に影響が出るレベルでの睡眠時間圧迫になってしまうわけですね。

 

 

 

トラブルその4

『そして話者が嫌いになる』

 

当たり前の話ですが、話者も人間であれば、書き起こす私も人間です。

 

つまり、そこに好き嫌いが生じてくるのは、当たり前なんです。

 

シリーズ物のテープ起こしをしたとき、

 

主役の40代男性の傍若無人な態度を何度も聞き返すうちに、

 

その人のことが大っ嫌いになってしまいました。

 

もうほんと、声を聞くのも嫌になるくらい!!

 

(声を聞いて、文章に起こすのがお仕事なのに!!)

 

あのストレスはやばいですよ。

 

嫌いな人の言葉を聞き続けるストレスは。

 

だんだんと病んでいきます、マジで。

 

 

トラブルその5

『そして時給の大幅減少』

 

さきほど、時給700円くらいと書きましたが、

 

上記トラブルによって作業時間が増大すれば、

 

時給はどんどん下がっていくわけです。

 

仮に60分テープの作業に16時間かかってしまえば、

 

5400円/16時間=337円

 

もうね、電気代とか作業時間とかストレス考えたら

 

やらないほうがマシなレベルです。

 

 

 

トラブルその6

『聞き取れないものは、聞き取れない』

 

そして最後はね、もうこれにつきると。

 

何十回、何百回、同じ言葉を繰り返し聞いても、

 

聞き取れないものは聞き取れないんです。

 

聞き取れない場所は、チェックを入れてとりあえず先に進むのですが

 

書き起こしの後の聞き直しのときに

 

その膨大なチェックを再度、何十回、何百回と繰り返し聞いて・・・。

 

うん、やっぱり何言ってるかわからない!!

 

でも、とりあえず形だけでも納品して、

 

そして、元請からのお叱りの言葉をいただくことになります。

 

はあ・・・。ほんと申し訳ない。

 

でも、わかんないものは、わかんないです。

 

 

 

 

 

他にもっと色々書きたいことはあるのですが、

 

まあ、大きく説明するとこんなところでしょうか。

 

理想と現実、だいぶ違いましたでしょ?

 

テープ起こしを紹介してるページはおおいけど、

 

その本質を書いてあるものは少なかったので、今回、

 

この記事をかかせていただきました。

 

 

 

ここで誤解して欲しくないのが、

 

テープ起こしは自分の技術を高め

 

ヘッドフォンやアンプにしっかりと設備投資をし、

 

ちゃんと本腰入れて行えば、しっかりと稼げるお仕事です。

 

それに、自分の知らない世界の話を聞けて、

 

人生の経験値は間違いなく上がりますからね。

 

本気でやるなら、かなりいい仕事だと思います。

 

 

 

・・・つまり何が言いたいかというと、

 

自分のように簡単な副業感覚で始めると

 

絶対に痛い目を見るということです。

 

あいたー・・・。

 

世の中に美味い話はないですからね。

 

これからテープ起こしをやってみたいと思う人は、

 

 覚悟してその世界に飛び込んだほうがいいですよ。

 

 

 

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